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 環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐり、日本では、世論を二分する議論が続いている。米国では、メディア報道なども含め、ほとんど話題になっておらず、TPPの存在自体を知らない国民が多いのと対照的だ。



 現在、米国やオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシアなど、すでに加盟が決まっている9カ国が交渉を重ねており、締結すれば、加盟国間で、農業や製造業、医療など24分野での関税が、ほぼ撤廃される方向で動き出す。



 野田佳彦首相は、先のアジア太平洋経済協力会議(APEC)でTPP交渉に参加する意向を明らかにし、米政府は、今後1年以内での交渉決着を目指すと発表した。だが、農家や日本医師会、農水族議員などの反対は根強く、参加の意向を打ち出したことで、野田政権の支持率が急落しているともいう。



 TPP加盟は、日本の農業や製造業をどう変えるのか。日本が参加することのメリットとデメリットは何か。日本経済と国際貿易を専門とするコロンビア大学のデービッド・ワインスタイン経済学部教授に電話で話を聞いた。



――日本に対し、TPP参加を強く働きかける米政府の意図は何か。



ワインスタイン教授 貿易障壁の撤廃で日米両国に経済上の恩恵をもたらすこと。また、グローバルな経済・政治システムの重要性を高めるという政治的意図もあるだろう。日米や他の太平洋の国々が、しかるべきレベルの団結を示すことは重要だ。願わくは、将来、中国も巻き込んだグローバルな経済・政治システムが構築できればいいのだが。



 TPP締結は、日米において、競争力に富んだセクターでの雇用創出につながるだろう。どちらの国にとっても、いいことがある。双方両得の貿易協定だ。



――特にどのような分野の産業にメリットがあるのか。



ワインスタイン教授 たとえば、日本では自動車産業だ。もし日本がTPPに加わらないようなことになれば、すでに米国と自由貿易協定(FTA)を結んだ韓国のメーカーに後れをとってしまう。フォードがTPPに反対しているのは、日本の自動車メーカーのほうが、大きなメリットを受けられるからだ。加盟しないと、自動車業界など、日本の主要セクターで、逆に雇用が失われる可能性が強い。



 一方、米国で最も恩恵を受けるのは農業だ。米国の農業は、きわめて効率性に富み、ハイテク化されている。生物工学が盛んなおかげで、生産量が増え、非常に低価格で流通されている。だから、TPPで食料品の価格が下がることも、日本が受ける大きなメリットの一つだろう。



――農協などが猛反対している理由も、まさにそこにある。生き残れるのか、という不安だ。



ワインスタイン教授 日本の農業は、長年にわたって保護されてきた。問題は、日本が、どちらの方向に舵を切るかを決める必要があることだ。農業など、貿易上の観点から、このまま世界に門戸を閉ざし続けたいのか。それとも、世界の国々とスクラムを組みたいのか。TPP参加で、日本の大半のセクターは、大いに恩恵を受けるだろう。



 一方、農業に大きな影響が及ぶのは確かだ。日本は、国土が狭く、人口密度も高く、農産物の効率的な生産に適する耕作地が豊富とは言いがたい。(低価格の農産物が大量に輸入されれば)生き残れる農家もあるだろうが、多くは消えてしまうのではないか。その意味で、農家の主張は正しいように思える。



 だが、問題は、日本が農業国ではないことだ。国家的見地からいえば、TPPが、日本に勝利をもたらす戦略であることは明らかである。日本経済に不利益を生じさせてはならない。TPPは、日本に総体的な恩恵をもたらす一方で、非常に限られた数の、だが発言力のある少数派の人たちには代償の大きい政策の典型だ。



――現在、コメには、778%の関税が課されている。とりわけ反対が根強い稲作農家についてはどうか。



ワインスタイン教授 はっきり言えるのは、高級米は生き残れるということだ。(20年前に実施された)牛肉の輸入自由化と同じである。神戸牛など、さまざまな高級品は生き残っている。一方で、低価格品は輸入牛が多い。コメについても、非常に似たような状況になろう。高級米のなかには、生き残れるブランドもあるだろうが、駅弁などに使われる普通米は、米国産のコメに取って代わられる可能性が強い。



――政府は、不利益を受ける農家にどのように対応すべきか。



ワインスタイン教授 農家の収入減に対して補償金を出すのがベストだろう。そのお金で、安心してリタイアできる人も現れるかもしれない。一方、職業プログラムなどによって、他のセクターへの転職を図る人も出てくるかもしれない。



――現在、日本の食料自給率は40%足らずだ。割安な輸入品の増加で国内産品が淘汰され、自給率が20%以下にまで落ち込むという批判もある。



ワインスタイン教授 まったくお門違いな指摘だと思う。世界の農産物にドアを開けば、食料上の安全保障の点でもプラスだ。福島の原発危機(による放射性物質の食品系への影響)でも分かったように、国内農業に全面的に依存することは、必ずしも得策とはいえない。



 また、米国が、極めて重要な同盟国である日本に食料を輸出しなくなる、などという事態が起こりうるはずもない。それよりも、大震災の例からみても、国内メーカーに依存しすぎることで、食料供給に支障を来すリスクのほうが大きいようにみえる。農業の自由化がもっと早くなされていれば、現在、日本で問題になっているような食品の安全性に関する憂慮も小さかっただろう。食の安全についていえば、今の日本では、外国からの供給を増やすことよりも、国内供給に依存することへの懸念のほうが大きい。



――製造業についてはどうか。



ワインスタイン教授 日本の製造業は、大半のセクターが競争力に富んでいるため、TPPで大きな利益を得るだろう。一部低価格の家電製品などは、韓国などの企業に敗れることもあるかもしれないが、日本の製造業分野の関税は、すでに非常に低いため、多くの企業にマイナスの影響が及ぶことはない。



――日本医師会も反対を表明している。



ワインスタイン教授 医療分野への影響は比較的小さいのではないか。米国人医師が行える医療サービスは少ないように思える。アウトソースされるものの一部は、非常に専門化された分野だ。



――TPPが24分野に及ぼす具体的な影響について、詳細がまだほとんど明らかになっていないなか、加盟を決めるのは性急だという声もある。



ワインスタイン教授 議論を重ねるのはいいことだ。とはいえ、生産的な議論ならいいが、協定を遅らせる手段としての話し合いは好ましくない。乗り遅れれば、日本は高いツケを払うことになる。というのも、韓国企業が、FTAにより、関税なしで米国に製品を輸出できるようになれば、日本は、いっそう過酷な競争にさらされるからだ。米国は、TPP締結に向けて動き出している。日本が立ち遅れれば、他のアジア加盟国や韓国に大きく水をあけられてしまう。



 日本にとって、TPPに出遅れるという選択肢はないように思う。それは、非常に高くつく。中国の輸出が大幅に増えたのも、1999年に世界貿易機関(WTO)に加盟したことが理由の一つだ。



 来年以降に始まる米韓FTAは、日本メーカーへの途方もないプレッシャーとなるだろう。日本が、ただ手をこまねいて待っているのはいただけない。世界は待ってなどくれない。前に進んでいるのだ。



*****************



肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト



 東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などにエディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・トリノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘される。2009年10月、ペンシルベニア大学ウォートン校(経営大学院)のビジネスジャーナリスト向け研修を修了。『週刊エコノミスト』 『週刊東洋経済』 『プレジデント』 『AERA』 『サンデー毎日』 『ニューズウィーク日本版』 『週刊ダイヤモンド』などに寄稿。日本語の著書(ルポ)や英文記事の執筆、経済関連書籍の翻訳も手がけるかたわら、日米での講演も行う。共訳書に『ワーキ ング・プア――アメリカの下層社会』『窒息するオフィス――仕事に強迫されるアメリカ人』など。マンハッタン在住。 http://www.misakohida.com





(この記事は経済総合(ウォール・ストリート・ジャーナル)から引用させて頂きました)



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