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■上司も会社も知らないキャリアの正解



 いまの20~30代の会社員は、以前よりも過酷な環境の中で働いているといえます。かつて日本の会社員には、自らのキャリアを考えていくうえでの一つの「答え」がありました。大学を出て、会社に就職する。年を追うごとに賃金が上がり、下積みの時期を経て社内での役職や立場を得ていく……。しかし、バブル崩壊以後の1990年代の前半から、日本企業の雇用を取り巻く環境はがらりと変わった。そうしてやってきたのが、経済が右肩下がりの中での「答えが誰にもわからない時代」です。



 いま、何をすればいいのかについて、会社も上司も正解を知らない。目の前に成功した人がいたとしても、別の人が同じやり方で成功するとは限らない。キャリアの「地図」を描いてみたところで、そこにある道程を歩いていくことが難しくなっています。

 どんな苦難に際しても、選択肢をいくつか考え、物事を前向きに捉える──。現在、こうした姿勢そのものがいよいよ「資本」として機能する時代になってしまったといえるでしょう。これを専門用語では「ポジティブ心理資本」と呼びます。



 右肩上がりの時代において、心理資本はそれほど意識しなくてもいいものでした。企業や組織は安定的に拡張していたため、個人は粛々と与えられた仕事をやっていれば、それが「成功」を意味する可能性が高かったのです。この時代は、終身雇用・年功序列という日本的雇用慣行を諸条件として、上司も若手社員に対して仕事上のアドバイスや関わりを手厚く行っていました。だからこそ、あまり意識的かつ戦略的にならずとも、人材育成が機能していたのです。

 ところが不確実で変化の速い社会になってくると、誰も正解はわかりません。にもかかわらず、あなた自身が、答えのない環境において、何をなすかを問われます。



 会社や上司も自分のことで精一杯で、若手を育てる余裕がない。そのような過酷な環境でも、自ら挑戦し、キャリアをデザインしなければならない。苦難にめげず、むしろ余裕をもって前向きに選択肢を提案できる姿勢が、いわば「資本」として、のちの成功を左右することになってしまうのです。

 アメリカのジャーナリスト・バーバラ・エーレンライクが『ポジティブ病の国、アメリカ』という本を書き、糾弾したのは、この問題です。つまり、現代社会では、人はポジティブになることを「規範」として押しつけられている。しかし、人は常にポジティブでいられるわけではない。それは、現代社会の病理だというわけです。

 もちろん、エーレンライクの主張には共感できるところもあります。しかし、一方で、私たちは元いた場所に戻ることができないのも、また事実です。ここにジレンマがあります。



 それでは、どうすればいいか。わたしにも答えはわかりません。が、いくつかのポイントがあると思います。

 まず第一に、しなやかに問い続け、そこから逃げないことです。

 キャリアや価値観を絶対化、標準化せず、柔軟に、しなやかに考えなくてはいけません。つくった「地図」を歩いてみたら、そこに描かれていない別の道に美味しそうな木の実を見つけた。そうしたら、そちらへ歩いていくことを柔軟に判断すればいいのです。





■組織に依存しない「マルチタグド・ライフ」



 第二に、組織の枠で物事を考えないことです。

 例えば、「大企業だから大丈夫」「ベンチャーだから挑戦できる」などと組織のサイズでものを考えない。挑戦できる大企業もあれば、搾取されるベンチャー企業もあります。組織の枠でものを考えることをやめ、自分自身の組織の実態を見つめ直すことからはじめてはいかがでしょうか。現在、会社や組織という枠を超えて成長機会を見つける「バウンダリーレス(境界のない)・キャリア」という考え方が注目されています。

 こと、人材育成に関して言えば、人は「儲けの環境」でしか成長しません。自分の組織でそれが望めないのなら、別の部署で新しい仕事に挑戦したり、成長市場への転職を検討する必要があるでしょう。

 私のいる大学院を卒業したある学生は、「マルチタグド・ライフ」というキャリア観を提唱しています。ある企業に勤めていながら、別の会社から仕事を請け負ったり、NPOを立ち上げたり……会社というものは一つの「タグ」にすぎず、複数の「タグ」から成長機会を求めるという考え方です。給料がなかなか上がらないこれからの日本では、こうした働き方が増えてくるかもしれません。



 第三に、自分自身の業務経験を「ひとつのストーリー」として語れるようにしておくことです。

 いまの社会は多くの物事がコピー&ペーストできてしまう社会だといえます。その中では、資格のようなポータブルなスキルはあまり役に立ちません。他者との差異化の源泉となるのは、コピー&ペーストできないものだけです。その一つが「ストーリー化された経験」でしょう。

 人がやっていない新しい仕事に挑戦することは大切です。しかし、挑戦ばかりしていても、経験はストーリーになりません。折りにふれて、自らの業務経験をふりかえり、それを「一つのストーリー」としてまとめることが重要です。それは、「いろんな仕事をしてきたけれど、結局、仕事人生を通じて追求したかったこと、大切にしてきたことは何か」ということを見出す作業です。私も大学に勤める研究者として、自分のこれまでの研究を振り返る時間を意識的につくるようにしています。



 四つ目は、社外のネットワークをつくることです。

 20代の頃の私は、論文をひたすら書き続けることだけに専心していました。しかし、30歳近くなったとき、自分が生涯をかけて追求したい学問分野をつくり出そうと一念発起しました。その挑戦を支えてくれたのは、大学外の人々とのネットワークです。

 以来、大学組織の外の人たちを集めた学びの場「Learning bar@Todai」を主宰するなど、外の世界に目を向ける活動を始めました。異なる立場の人たちとの交流が、自分の研究に新しい視点を与えてくれています。

 自分を成長させてくれるのは、「おまえだったら大丈夫」と言ってくれる“安心屋”と「このままじゃダメになるぞ」と言ってくれる“緊張屋”の二つのタイプです。もし自分の周りにいなければ、twitterやfacebookなどを利用して勉強会に参加し、人脈を築いていくのも一つの方法でしょう。

 枠にとらわれず経験や人脈をつくり、成長機会を求める──そうした前向きな姿勢が閉塞感を突破する武器になるのです。





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東京大学大学総合教育研究センター准教授

中原 淳

東京大学卒業、米国マサチューセッツ工科大学客員研究員などをへて、2006年より現職。著書に『職場学習論』『リフレクティブマネジャー』(共著)など。



稲泉 連=構成

上飯坂 真=撮影





(この記事は経済総合(プレジデント)から引用させて頂きました)



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